オブジェとしても絵になる、角材フレームのバスケット SF Basket 01 - Shigeki Fujishiro
オブジェとしても絵になる
角材フレームのバスケット
SF Basket 01 - Shigeki Fujishiro
藤城成貴は10 年以上、さまざまな素材でバスケットをつくってきました。最初はロープを編むところから始まりましたが、工業製品を含むさまざまな素材を組み合わせたり、つなげたりを自分の手で試しながら、プロダクトデザインとしてのバスケットを追求してきました。バスケットをつくる面白さの一つは、三次元のプロダクトでありながら、二次元から立ち上がるという点です。CAD から生まれる、3D プリンターで出力できるような立体とは異なり、平面図の状態から考える必要があり、その過程と結果を確かめるために、藤城は何度もまず紙で試します。
MAS のファミリーに加わった〈SF Basket 01〉も、段ボールと紙で試作を重ねて生まれました。MAS を象徴する、少し無骨な印象のあるヒノキの角材と、自由にかたちを変える布製のバスケットが出合うことで、中に入るものを受け止めながらも、しっかりとフレームで支える構造が完成しました。数センチ床から浮く設計にしたことで、カフェやオフィスであっても、自分の手荷物や上着が床につかない安心感があります。立体になったときの丸みや、重量が加わるときの落ち感を紙のプロトタイプで何度も確かめ、最終的には自身でコットンベルトを縫い合わせた試作品もつくりました。
上から見ると、楕円の上下左右、それぞれのちょうど中央からベルトが落ちているので、側面のアングルからは、なめらかな一本の器の輪郭が描かれます。このベルトの位置も、さまざまなパターンで検証しました。ものを入れるときの使い勝手はもちろん、なにも入っていないときにも一つのオブジェとして存在感を示します。ベルトの色は空間に溶け込むグレーと、ヒノキの色に馴染みながらも置く場所にアクセントを加えるマスタードの2 色を選びました。面ファスナー式なので、汚れたら取り外して洗うことができるのも、気に入っている点だと言います。またバスケットのサイズは大小2 種類あり、大きい方は長手方向に5 本のベルトを、小さい方は3 本のベルトを並べました。ベルトの本数を奇数にすることで、先述したきれいなラインが生まれます。スタッキングという機能もデザイン上の制約ではありましたが、結果として大小が重なり合う面白い光景も生まれました。
ヒノキという素材について藤城は「いわゆる和風のイメージが強く出るかもしれない」と、慎重になっていたと言います。この感覚は竹や畳といった素材にも通じるものでした。しかし今回のプロジェクトも含め、最近は日本的な素材をモダンデザインに組み入れながらも、その印象を更新していく工程を楽しんでいると話します。このフレームも一見しただけではヒノキであるかどうかはわからないかもしれませんが、特有のやわらかさや香りというささやかなしるしを、使う人が受け取れます。
機能性や意匠についてはさまざまな検証を重ねましたが、あえて切り捨てた部分もあります。「やらないときの方が、いいことがある」と藤城は言い、プロダクト的な考え方を主軸に置きつつも、先鋭化させすぎず、ゆるさもあえて残しました。その結果、誰もがより自由に使えるバスケットとなりました。〈SF Basket 01〉は、カフェや職場で一時的に手荷物を入れたり、自宅のリビングでブランケットの収納や小物の置き場所にしたり、玄関でスリッパを収納したりと、あらゆるシーンに使えます。それが、用途が限定されないこの道具の魅力かもしれません。民芸的なラフなやさしさと、こだわり抜いたプロダクトデザインの佇まいが融合する、MAS の新しいバスケットです。
Writing : Mai Tsunoo
Photo : Masaaki Inoue / Bouillon