柔らかさのなかに湧き立つ、凛とした佇まい。 WK Chair 01 Pad & WK Armchair 01 Pad by Wataru Kumano
柔らかさのなかに湧き立つ、
凛とした佇まい。
WK Chair 01 Pad & WK Armchair 01 Pad by Wataru Kumano
デザイナーとして国内外のさまざまなプロジェクトに携わりながら、MAS のデザインディレクターを務めている熊野亘。彼がMAS で針葉樹と向き合ったとき、真っ先に注目したのが、キメが細かく、艶やかな光沢を持つ針葉樹の木肌の美しさでした。
針葉樹の木目を際立たせるためには、ほっそりとしたラインではなく、ある程度たっぷりとした素材ボリューム感が必要。それでいてずんぐりむっくりの寸胴なかたちには見えず、現代の生活空間に合う存在感を示すものとはなにか? 熊野は木肌の魅力と造形とのバランスを整えながらデザインを展開しています。
少し離れた地点から〈WK Chair 01〉全体を眺めると、垂直の方向に走る脚と水平方向に伸びる座面がほぼ直角に交わって接合されていることがわかります。この構造をより特徴づけているのが、座面の前面両端に施された特徴的な木材の組み方でしょう。
これは霰組(あられぐみ)といって、釘などを一切使わずに材を強固に接合し、箱型のものをつくるために使われる日本の伝統木工技術で、日本酒を飲む時に使う「枡」づくりには欠かせない組み手です。元来、計りとして日常の暮らしのなかで使われ、現在では祝い酒を飲むときや節分の豆まきなど、ハレの道具として存在する枡のように、この椅子が幅広いシーンに置かれることを想定しています。
一方で、背もたれや座面は、座った瞬間にすっと人を受け入れ、長時間座っていても疲れにくいように、ゆったりとした適度なカーブを描いています。オフィスやホテル、商業空間だけでなく、住宅のリビングやダイニングでも幅広くお使いただけるように、スタンダードな板座のほかに、6 種類のファブリックを採用した張座仕様もコレクションに新しく加わり、さらに座り心地が良くなりました。張座仕様では、針葉樹の木目の美しさを上面からも感じられるように、座面フレームの四方に枠を残しているのも特徴です。
Styling : Fumiko Sakuhara
Photo : Masaki Ogawa
Writing : Hisashi Ikai